この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。


正直こういうノリはちょっと苦手だったけど、悠聖と学校にいるっていう夢みたいなシチュエーションに、あたしは少しドキドキしていた。

バンドまでには来いよと言って、みんな教室を空けてくれた。

「悠聖、バンドするの?」

「俺じゃねーよ。春斗」

「春斗って楽器弾けたっけ?」

「ボーカル」

歌も大してうまくなかった記憶があるんだけどな。

悠聖の席に座るのかと思いきや、窓の下の床に座って、あたしの手を引いて隣に座らせた。

「悠聖の席どこ?」

「ここ」

あたしのすぐ隣にある、窓側の最後列を指さす。

なんとなく悠聖っぽい。

「なんで床に座るの?」

「窓から見えないように」

よくわからない。また誰かに見られて騒がれるのが嫌ってことだろうか。

「悠聖、みんなと仲いいんだね」

「まーな」

「……〝悠ちゃん〟って呼ばれてたね」

許すと思いながらも、モヤモヤは完全には晴れない。

だって、金髪ポニテさんが言っていた〝悠ちゃん〟が頭から離れてくれない。

「ああ、昔から〝悠ちゃん〟ってけっこう呼ばれるよ」

「……女の子はほとんど〝本田〟だったじゃん」

「中学から一緒の奴は男も女もだいたい〝悠ちゃん〟だよ」

「……そうなんだ」

「ちなみにさっきの金髪は紀子(のりこ)っつって、幼稚園からの幼なじみ」

「……そうなんだ」

「ちなみに家族には〝ゆう〟って呼ばれてる」

「……そうなんだ」

「妬いてんの?」

「………」

床を見ながら黙り込んだあたしに、悠聖はどこか楽しそうに短く笑った。

あたしにとってはあんまり笑い事じゃないんだけど。

「お前はほんと可愛いなあ」

あたしの肩に左手をまわして、こつんと頭を重ねた。

「チィも〝悠ちゃん〟って呼んでいーよ」

「呼ばない」

「なんで? 怒ってんの?」

「あたし、〝悠聖〟って名前好きだから」