いやなにが「むしろ」なんだ。
次々と飛んでくる言葉に圧倒されて困惑しながら乃愛を見ると、得意の満点スマイルで「中学生です」と返した。
「中学生⁉ 見えねぇ!」となぜかさらに興奮したらしい彼らは、連絡先を交換しようと盛り上がる。
乃愛、恨む。
「ごめんなさい。知り合い探さなきゃいけないので」
前言撤回。ありがとう乃愛。
あたしは圧倒されて言葉も出てこないから、断ることすらできない。
「知り合い? 誰? 一緒に探してあげる!」
「いや、」
引き下がらない彼らに乃愛が満点スマイルのまま言いかけた時、目をハートに輝かせていた男の人が、あたしたちの後ろを見て「あ」と一瞬止まった。
誰が来たんだ、これ以上増えないでくれと願いながらあたしも振り返ると、
「お前ら、人の妹ナンパしてんじゃねーよ」
ポケットに手を入れてだるそうに歩いてくる春斗の姿。
この人たち春斗の知り合い?
とりあえず助かった、と胸を撫でおろす。
「あ? 妹? 誰の?」
「俺のに決まってんだろバカ」
「マジかよ! どっち⁉」
こっち、とあたしの頭に手を乗せて、「着いたなら連絡しろよ」とため息をついた。
そっちこそこんな人たちがいるなら事前に教えろよと言い返したいのをぐっと堪える。
「春斗の妹って……マジかよお~」
「いや、まあ妹ならいいか」
「そうだよな。やっぱ連絡先教えて!」
安心したのも束の間、またわいわいと騒ぎ始める。
「だめ」
今度は後ろから声がした。
声さえ聞こえれば振り向かなくてもわかる。
腕をつかまれて一歩下がると、右隣に悠聖が立った。
「こっちはだめ。俺のだからナンパすんな」