本当は『ちーちゃん』『ゆうちゃん』ってキーホルダーもあったんだけど。ウケ狙いでそっちにしようかな、って一瞬考えたんだけど。
真剣に選んでよかった。悠聖は優しいからつけてくれるだろうと思っていたものの、こんなに喜んでくれるとは思わなかった。
悠聖はすぐに家の鍵を取って、たった今あたしが渡したキーホルダーをつけてくれた。
お互いの鍵に、お互いのイニシャルが光った。
「楽しかった? 修学旅行」
「うん」
「誰かに告られたりした?」
「は?」
なんでそんなこと訊くんだろう。どうして笑っていられるんだろう。
あたしは高校で悠聖が綺麗な女の人に囲まれてるところを想像しただけで嫌な気持ちになるのに。
「……あたしが告られたりしたら、嫌じゃないの?」
「なんで? 告られちゃうのは止めようがなくね?」
「そういうことじゃなくて……ヤキモチとか、妬かないの?」
「だってお前、俺のこと大好きじゃん」
「えっ」
それはそうなんだけど。一日が二十四時間であるのと同じくらい当たり前なんだけど。大好きで大好きでしょうがないんだけど。
「俺のこと大好きで大好きでしょうがねーだろ」
この人あたしの心を読めるのかな。
たった今思ったことを口に出されて、あたしの顔はまんまと熱くなる。
好きって何度も何度も言ってるのに、改めて確認されると恥ずかしいものだ。
「……まあ、好きだけど」
強がってみせると、悠聖は満足気に笑ってあたしの頭を撫でた。
「わかってるから別に妬かねーよ。それに、俺よりいい男なんかいねえもん」
冗談なのか、本気なのか。悠聖はいつだって余裕綽々で、どっちなのかまったくわからない。