「チナ、ちょっと話あるんだけど」

終業式を終えた放課後。ちょっと違うクラスの友達に呼び出された、と言って教室を出ていった乃愛が、明らかに怒りを含んだ表情で戻ってきた。

その姿に戸惑って返事をしないあたしに、眉間にしわを寄せながら小さく手招きをする。

あたしは困惑したまま鞄を手にとって、先に歩き出してしまった乃愛のあとを小走りで追う。

着いたのは、いつもみんなが休み時間とかに溜まっている多目的ホール。そこにはいつも友哉といる男の子がふたり座っていた。

「え……なに? どうしたの?」

やっと足を止めた乃愛も、不機嫌なまま輪をつくるように腰をおろした。

「こいつらがチナに話あるんだって」

乃愛に睨みつけられたふたりは、顔を見合せながら困惑をあらわにする。

「話って? 乃愛じゃなくて?」

「あんたらなに黙ってんの? あたしじゃなくてチナ本人に話すべきなんじゃないの?」

「……だよな」とふたりは気持ちを落ち着かせるように小さくため息を吐く。

それを見てやっとわかった。乃愛が怒っている理由。ふたりがあたしに話すべきこと。ひとつしかない。

「……友哉がさ」

やっぱり友哉のことだ。

「みんなで友哉に訊いたんだ。チナちゃんと別れたってマジなのかって」

「チナちゃんはどう思ってんの? あんなに仲よかったじゃん」

なんて言えばいいんだろう。控えめに問う彼らに、あたしはただうつむくことしかできない。