三年生になると、受験の前に中学最大のイベントがある。

三泊四日の修学旅行。行き先は東北と函館。

非日常的な風景に圧倒されて、みんなで思いきりはしゃいだ。普段は禁止のスマホもこの日ばかりは許可がおりていて、みんなでたくさん写真を撮った。

ご飯を食べて、温泉に入って、部屋でまったりする。部屋は四人部屋で、乃愛の他に一年生の時から同じクラスの子ふたりと一緒になった。

小学校の修学旅行では定番の枕投げなんてしてたのに、少しだけ大人になったのか、開催されたのは恋話大会だった。

「乃愛とチナってほんとモテるよね」

消灯はまだだけど、疲れたあたしたちは布団に入って電気も暗くした。

「モテる? 乃愛でしょ? あたしは別にモテないよ?」

いつも一緒にいるから、気を使ってあたしの名前も出してくれたんだろうか。

否定すると三人は「え?」と声を揃えた。あたしの方が「え?」だ。

「チナ、自覚なかったの?」

隣の布団に寝転がっていた乃愛がガバッと起き上がる。

「え……だってモテるっていうのは、いろんな男の子に言い寄られたりすることでしょ? 乃愛じゃん」

「いやいやいや」

また三人同時に言って、おまけに首まで振られた。

「チナだって次々と男寄ってくるじゃん。友哉でしょ、椎名に宗司くんに、今は悠聖くん。立て続けに誰か現れるじゃん」

宗司くんとは付き合ってないし、なんなら今の今まですっかり忘れてたけど。

「え、すごっ。チナそんなに付き合ってたの?」

「友哉と椎名しか知らなかった。モテモテじゃん! あたしなんてまだ彼氏できたことすらないよ!」

「なんで自覚ないのか不思議でしょうがないよ」