「いや、好きだよ」
「ずっと我慢してたって言ってたじゃん!」
「言ったけど……お前あんま恥ずかしいこと覚えてんなよ」
「じゃあなんで? 付き合ったんだからもう我慢しなくていいのに、なんでチューすらしてくれないの? あたしとしたくないの?」
「お前けっこう大胆だな」
悲しい時って、喋れば喋るほど、どんどん涙が出てきてしまう。
ついに子供みたいに泣きじゃくり始めたあたしを見て、悠聖は困ったように小さくため息をついた。
「別にそんなたいした理由じゃないんだけど。泣くほど気にしてたの?」
付き合ってまだ一ヶ月も経ってないはずなのに、付き合う前からずっとふたりきりでいたから、長く一緒にいるように感じてしまっているのかもしれない。
声がうまく出ないから、頭を上下に振る。悠聖の大きな手があたしの頭に乗った。
「チューしないのは、したらそれ以上したくなって我慢できなくなるからです」
「じゃあすればいいじゃんっ」
「お前……なんつー爆弾発言してんだよ」
声を出して笑った悠聖は、頭に乗せてた手をそっとおろした。
「まず第一に、大事にしたいから。あと……」
「あと?」
「……わかりやすく言うとな。例えば向かいの部屋で、乃愛ちゃんと春斗がヤッてたらどう思う?」
予想外すぎる質問だった。そんなの考えたこともなかったけど、もしそうなったら……。
「え、やだ。すっごいやだ。めっちゃ気まずい」
万が一ふたりが付き合ったとしても嫌ではない。だけどお兄ちゃんと親友が向かいの部屋でそうなってたら……気まずいにも程がある。
「な。そーゆうこと」


