「じゃあそろそろ行くかな」
たくさんゲームをして、たくさん話して、たくさんくっついて。絶対にいい雰囲気なのに、悠聖は必ず、二十一時頃になるとあたしの部屋から出ていく。
「行っちゃうの?」
「いや、まだ帰んねーよ。春斗の部屋戻るだけ」
それって結局、この部屋からは出ていくんじゃん。
「じゃあな。おやすみ」
パタン。
あたしは最近この音が嫌いだ。
ひとりになる音。悠聖がいなくなる音。
付き合ってからも、悠聖は夜遅くなると春斗の部屋へ行ってしまう。
友達だから当たり前なのだけど、付き合ってから二週間ほぼ毎日来てるのに、あたしの部屋には泊まってくれない。
いくらくっついても、毛布にくるまっても、なにもしてくれない。こんなに一緒にいるのに、こんなにアピールしてるのに、キスさえしてくれない。
あたしは――〝したい〟って思ってるのに。
こんな気持ちは初めてだった。友哉に言われた時はただただ混乱して、どちらかと言えば嫌だったし、できればしたくないと思っていたのに。
自然と、悠聖とはしたいと思えた。悠聖に抱かれたら、前に乃愛が言ってた気持ちがわかるんじゃないかって、そんな気がしていた。
――今までより、もっともっと好きになった。
あたしが経験したことのない気持ち。好きな人に触れられるってどんな感覚なんだろう。
それが知りたくて、もっともっと悠聖に近づきたくて必死だった。だけど悠聖は気づいてくれなくて、毎回こんな切ない気持ちを味わうことになる。
ううん。悠聖のことだから気づいてるかもしれない。気づいてないふりしているのかもしれない。だとしたら、もっとショックだ。
悠聖はあたしとしたくないんだろうか。
――押し倒してやろうかと思った。
あれは冗談だったんだろうか。
女の子なのに〝したい〟と思っちゃうなんて、あたしが変なのかな。