悠聖と付き合い始めてすぐ春休みに突入した。もちろん付き合ったことは乃愛と友哉に報告済みだ。
悠聖はバイトを増やして忙しそうだった。だけど夜は毎日のように来てくれるし、休日は遅くても夕方くらいには来てくれる。
お母さんの中ではもちろん〝春斗の友達〟だから、遅くまでいても問題ない。〝お兄ちゃんの友達〟と付き合うって便利だなって、初めて春斗に感謝した。
付き合ってからも特に大きな変化はなく、あたしの部屋にいてもただゲームをしながら話すだけ。
楽しいし、付き合ってからの悠聖は前にも増して優しいし、幸せなのだけど。
あたしはひとつだけ不満があった。
*
四月になると少しずつ暖かくなってきた。
「悠聖、もうすぐ誕生日だね」
付き合ってから少しだけ変わったことは、座っている時の距離が近くなったこと。といってもあたしがくっついてるんだけど。
あんなに意地っ張りで意気地なしだったのに、不思議と悠聖の前では素直になれる。
くっつきたいって言ったら、優しく笑って「いいよ」と言ってくれたから、それからずっとべったりだ。
「よく覚えてたな」
「当たり前じゃん。O型、身長一八〇センチ」
「正しくは一七八センチ」
「え? なんでサバ読んだの?」
「見栄」
見栄? 身長を二センチだけサバ読むことが?
よくわからないけど、なんで?って訊いたらまた怒られそうだからやめた。
「じゅうぶんおっきいし、もしちっちゃくても好きになってたよ?」
まだまだ可愛い女の子までの道は遠いけれど、三つだけ覚えたことがある。
嫌味を言わないこと、すぐ怒らないこと、素直になること。
もう素直になれない自分も、そのせいで後悔するのも嫌だから、自分なりに研究した。
それに、その三つを実行したら悠聖は、
「お前ほんと可愛いな」
そう言って、くしゃくしゃと頭を撫でてくれる。それが嬉しくて、あたしはだんだん素直になれつつある。
ただひとつだけ、あたしの不満。