悠聖と付き合い始めてすぐ春休みに突入した。もちろん付き合ったことは乃愛と友哉に報告済みだ。

悠聖はバイトを増やして忙しそうだった。だけど夜は毎日のように来てくれるし、休日は遅くても夕方くらいには来てくれる。

お母さんの中ではもちろん〝春斗の友達〟だから、遅くまでいても問題ない。〝お兄ちゃんの友達〟と付き合うって便利だなって、初めて春斗に感謝した。

付き合ってからも特に大きな変化はなく、あたしの部屋にいてもただゲームをしながら話すだけ。

楽しいし、付き合ってからの悠聖は前にも増して優しいし、幸せなのだけど。

あたしはひとつだけ不満があった。



四月になると少しずつ暖かくなってきた。

「悠聖、もうすぐ誕生日だね」

付き合ってから少しだけ変わったことは、座っている時の距離が近くなったこと。といってもあたしがくっついてるんだけど。

あんなに意地っ張りで意気地なしだったのに、不思議と悠聖の前では素直になれる。

くっつきたいって言ったら、優しく笑って「いいよ」と言ってくれたから、それからずっとべったりだ。

「よく覚えてたな」

「当たり前じゃん。O型、身長一八〇センチ」

「正しくは一七八センチ」

「え? なんでサバ読んだの?」

「見栄」

見栄? 身長を二センチだけサバ読むことが?

よくわからないけど、なんで?って訊いたらまた怒られそうだからやめた。

「じゅうぶんおっきいし、もしちっちゃくても好きになってたよ?」

まだまだ可愛い女の子までの道は遠いけれど、三つだけ覚えたことがある。

嫌味を言わないこと、すぐ怒らないこと、素直になること。

もう素直になれない自分も、そのせいで後悔するのも嫌だから、自分なりに研究した。

それに、その三つを実行したら悠聖は、

「お前ほんと可愛いな」

そう言って、くしゃくしゃと頭を撫でてくれる。それが嬉しくて、あたしはだんだん素直になれつつある。

ただひとつだけ、あたしの不満。