本当は気づいていた。わざわざあたしの部屋にずっといることも、いつからかあたしを見る目が優しくなったことも、それがどういうことかも。

あたし、本当は。

連絡先を交換した日から、連絡がくるのをいつも待ってた。春斗が友達を連れてくる度に、悠聖も来てるかな、部屋来るかなって期待してた。

悠聖といると、時間が経つのが早すぎて寂しかった。隣に座ってる時、いつもドキドキしてた。

くだらないことをたくさん話して、たくさん笑って、いつも楽しかった。また来てほしいって、いつも思ってた。

悠聖と、もっと近づきたいと思った。

あたしを女として見てくれてるって確信がほしかった。

悠聖になら、なにをされてもいいと思った。

わかっていた。けれどぎりぎりのラインで自覚しないよう感情を抑えつけていたのは、ただただ失恋が怖かったから。

あんな辛い思いはもうしたくなかった。それだけだった。

弱虫なあたしは、自分の気持ちを認めることさえも怖かった。

「お前が俺に惚れてることくらい知ってるよ。素直になったからご褒美やろうか」

少し離れて、ショルダーバッグからピンク色の包装紙に包まれた四角いものを取り出した。

それを受け取って硬直しているあたしに「開けなくていいの?」と微笑んだ。我に返って、できるだけ丁寧に包装紙を剥がしていく。

中身は、ラメでキラキラ光るピンク色の花を両手に抱えた、青い小さなクマのぬいぐるみ。

「可愛い……」

「だろ?」

ぬいぐるみを見てまた涙腺崩壊したあたしに、「どんだけ泣くんだよ」と悠聖が困ったように笑う。

「これ、持ってるの、桜?」