言い返せなくて鯉みたいに口をパクパクしているあたしに、次々と説教を飛ばす。
「……て、てゆーか! 初めて部屋来た時、ガキに興味ないみたいなこと言ってたじゃん!」
「そこまで言ってねえだろ」
「目がそう言ってたのっ」
「まあ最初はなかったよ。変な勘違いしておもしれー奴だなと思ったもん。でも気持ちとは変わるものです」
「……それ、あたし悪くなくない?」
あんなこと言われたら、こっちだって意識しないようにするじゃん。
そう。ガキだと思われてることがわかっていたから、意識しないように。
「今まで俺がどんだけ我慢してたか、わかる?」
あたしの前にしゃがんだ悠聖は、ちょっとずつ距離を縮めて、布団に手をついて、顔を近づけた。
――くっついていい?
あの時よりも、近い。
震度一の地震なんか起きなくても、鼓動の振動だけで触れてしまいそうなほど。
「……なんで泣くんだよ」
気づいたら涙が頬を伝っていた。なんの予兆もなしに、勝手に涙が流れていた。
悲しいわけじゃない。嫌だったわけじゃない。
ずっと我慢していた嬉し涙が、一気に溢れてしまった。
「お前さ、俺のこと好きだろ」
すぐ近くにある悠聖は、目を優しく細らせている。
「……悠聖だって、あたしのこと好きじゃん」
ぽろぽろと涙が溢れる。意地っ張りで頑固なあたしに、悠聖はまた笑った。
「ああ。好きだよ、チィちゃん」
あたしの涙をそっと拭う。今までで一番、優しく笑って。
「……あたしも、悠聖が好き」
――悠聖くん、どっからどーーー見ても、チナのこと好きじゃん。