この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



涙がこぼれないように天井を見上げて、なんとか堪えた。恥ずかしいだろって笑われると思ったから。

「チィはさ。ふっきれたの?」

「なにが?」

「引きずってた元彼」

あたし――あんなに引きずっていたのに、自分でもびっくりするくらい最近は忘れていた。

そういえば自然と椎名を目で追うことも、もやもやすることもなくなっていた。

「……うん。もう大丈夫」

「そっか。よかったな」

いつからだろう。いつの間にそうなったんだろう。気づかないうちに自然とそうなっていた。

椎名のこと、忘れられたんだろうか。まだよくわからない。

「……悠聖は彼女のこと引きずったこととかある?」

あまり知らない、悠聖の昔の話。

「は? そんなこと聞きてーの?」

驚いた顔でこっちを向いた。

ちょっと、って答えると、また前を見て、うーん、と唸る。

「あー……なくはない」

「そうなんだ」

「なんかさ、初めて付き合った女って特別っていうか。別れたあとはちょっと引きずったかもな。まだ中坊だったし、今よりずっと女々しくて情けなかった」

自分で訊いたくせに、あたしは勝手にちょっとショックを受けた。悠聖に忘れられない女の人がいたこと、それくらい好きだった女の人がいたこと。

顔も名前も知らない女の人と今より幼い悠聖が笑っているところまで想像して、ちょっと落ち込んだ。

「でも今思えば、引きずってたっつってもそいつじゃなくて、付き合ってた時の思い出を引きずってたのかもな」

「思い出?」

「そ。あいつと付き合って楽しかったこととか、あーもうくだらねえことで笑うこともねえなーとか」

悠聖は前を向いて、思い出しながらぽつぽつと話す。