しばらく電車に揺られて着いたのは、市内で一番栄えている街だった。
迷子になってしまいそうなほど大きな駅構内を、少し前にいる悠聖について歩く。
「チィ、腹減ってる?」
「うん」
「じゃあとりあえず飯食いに行こう」
駅を出てまず向かったのは駅前にあるカフェ。
外装も内装もおしゃれで、もちろんこんなお店に来たことがないあたしは、席についてからも田舎者丸出しできょろきょろと店内を見渡してしまう。
「落ち着け」
「だってこんな可愛いお店来たことない! 悠聖、こんなお店知ってるんだね」
「まーな」
メニュー表を見て、パスタランチとホットココアを注文した。
食べながらいつもみたいに他愛のない話をする。
食べ終えてしばらくすると、店員さんが白い大きなお皿に乗った、小さなケーキを持ってきた。
お皿にはチョコレートで〝Happy Birthday Chinatsu〟の文字。
――バースデーケーキ。
店員さんに「お誕生日おめでとうございます」と笑顔で言われて、驚いて目を見開いたまま悠聖を見ると、「おお、よかったな」なんて他人事のように笑っている。
「……これ、悠聖が?」
「いや、作ったのは店員だろ」
「バカ」
このタイミングでふざけるなんて、雰囲気台無しだ。あたしは涙腺崩壊しかけてるのに。
「はは、冗談だよ。誕生日プレゼント」
こんなの初めてだった。それに、悠聖がお店に頼んでくれたのかなって考えたら、もう胸がいっぱいだった。
悠聖がこんなサプライズをしてくれるなんて思ってもみなかった。
「ありがとう……。めっちゃ嬉しい。泣きそう……」
「恥ずかしいから泣くな。食える? さっきけっこう食ってたけど」