悠聖と出かける約束をしてからなにをしていても落ち着かなくて、スマホばかり気にしてしまう。
行き先決まったかな、とか、なに話せばいいかな、とか、そんなことばかり考えていた。
長い長い一週間が終わり、約束の土曜日。
一分一秒が長くて、一時間はもっと長くて。お昼過ぎ、【今から行く】ときたメッセージにドキドキして、悠聖が迎えに来るのを待った。
春斗はバイトでいない。なんか恥ずかしいから、今日はいなくてよかったと思った。
【着いた】ときたメッセージを確認して、返信もせずに外へと駆け出す。ポケットに両手を入れて立っていた悠聖は、よう、と笑った。あたしも「よう」と短く返して、駅まで並んで歩いた。
「悠聖、今日どこ行くの?」
「内緒」
「えー。教えてよ」
「黙ってついてこい」
「ケチ」
「お前なあ。こういう時は『ええー楽しみ!』とか言っといたほうが可愛いぞ」
「どうせ可愛くないもん」
ああ、本当に可愛くない。せっかく朝から頑張っておしゃれしたのに、これじゃ台無しだ。
そんなあたしに悠聖は呆れることなく「しょうがねーな」と短く笑って、頭をぽんぽんと撫でた。
「いいから行くぞ。あんまり時間ねえし」
「はーい」
溶けかけている雪道はびしょびしょで歩きにくい。今日は背の高い悠聖に合うようちょっとヒールのあるブーツを選んだから、余計に歩きにくい。
「時間がない」と言った悠聖は、あたしに合わせてくれてるのか、急かすことも歩く速度を上げることもしなかった。
ほんと、なんだかんだ、優しい。