その9
夏美


その後、集まった署名は目標を起きく超え、最終的に1500人近くに上ったようだ

東京・埼玉両都県の教育委員会は、紅子さんからの上申書を受理し、検討に入った

そして年末にはちょうど、埼玉県知事選挙もあり、何と紅子さんは全候補者に当該上申事案の見解を求める質疑状を提出したのよ!

とにかく自身の言葉通り、常識に捉えられない”それ”が、この人の行動は何とも大胆というか、何しろ驚かされる

それでその知事選、両都県の高校親善女子駅伝実現に賛成の立場を示した候補が当選しちゃったてね

これで俄然、実現への弾みがついて、結局、翌年の春には第一回大会が実現する運びになったのよ!


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私は当然、県民運動場で開催された”東京埼玉選抜混合親善高校女子駅伝第1回大会”を見学したわ

参加校はさほど多くなかったど、都県境の主だった陸上が盛んな高校はあらかた選手を出し、紅子さんの当面の目的は達成できたと思う

東京もんとだ埼玉県民の新入女子高生がランダムに抽出され、同じチームランナーとして、駅伝のレースを走破し優勝を目指す…

私はその一部始終をこの目に刻んだわ

そして、誓った

来年は私もこの大会に参加すると…!


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中3も夏を過ぎると、いよいよ高校受験が視界にくっきりとね(苦笑)

でも、私は早々と受験する高校を決めていたわ

運動部が盛んで、女子の陸上部がある県立の滝が丘高校…

ここは春の駅伝大会にも参加していたんで、自分が新入生になったら、何が何でも出場する決意を固めていたんだ

そしてこの頃、もうひとつ胸に期していたのが、南玉連合への加入だったわ

最初はダメもとで紅組の門を叩こうかとも考えたが、人から紅組のことを聞けば聞くほど、私では到底無理だと知ってね…

それで、都県境最大規模を目指す南玉連合にって気持ちが固まったんだけど…

それでも、私みたいな普通の子なんか無理かなって思いは強かった

それが思わぬ状況の展開から、本気で南玉加盟の道筋を探ることになって…

あれは夏休みの部活動で、学校に行った時だったわ