その2
夏美


当日は絵にかいたような晴天に恵まれたわ

それにもまして、演台の上に立つ初めて目にする紅丸さんは、それはもうピカピカだったわよ

私は体中がしびれたちゃって…

こんな感覚、生れて初めてだ…

この人が単なる女暴走族の頭領な訳ないって!

私は120%そう確信して、自分に言い聞かせてやったわ


...


「タッコ、マユミ…、すごいよ!あの人…」

「うふふ…、夏美はあの怪物にすっかり参っちゃったみたいね…」

「いっそ、高校入ったら紅組の門叩いたら?」

「…でも私、オートバイ乗れないし…」

「アハハハ…、当たり前じゃん。中坊が免許持ってる訳ないでしょ。でも、紅組は少数精鋭主義だからね。宝塚並みのハードルってことだし、まあ、無理か…」

「ならさ、南玉連合に入ればいいって。あそこは大所帯にする方針らしいし、バイク乗ってのアジテーションだけじゃない、猛る女の結集勢力ってことだから」

南玉連合か…


...


とにもかくにも…、紅丸有紀さんのメインスピーチは私の心を一撃した

高校を卒業したばかりの女子で、よくもまあ大勢の人を前に、ここまで人の心を掴む演説が出来るものね…

いくらアメリカ育ちとはいっても…

身長は180はあるだろうし、あの体躯からして、相当の身体能力を有してるわ

更に頭の回転、鋭い感性、人を惹きつける深い人間味…

私は一気に都県境の怪物娘に魅了されたのよ