その3
夏美



それから5日後、U市内の某喫茶店で、私はその南玉連合OGと会うことになったわ

なんでも二人きりでということみたいで…

なんか…、当日になって不安になってきちゃった(苦笑)


...


土曜日の夕方ということで、その店はけっこう席が埋まってて、私は約束の5分前には店へ入ったんだけど…

入口付近で店内をきょろきょろ見回していると、女性の店員さんが声をかけくれたわ

「いらっしゃいませ。…どなたかとお待ち合わせですか?」

「ええ、5時ちょうどに…」

「失礼ですけど、相川様でしょうか?」

「はい。そうです…」

「では、あちらの一番奥の席でお待ちですので。どうぞ…」

わあ…、もう来てるらしいや


...


そのOGは野上玲子さんと言って、なんと、去年までの総長補佐さんだったよ!

「…相川さん、まあ、楽にして。今日は雑談のつもりで話してくれればいいから」

「はい…」

野上先輩は背は160センチくらいで、決して見かけは”その手”ではなかった

でもどこか貫禄というか、迫力というか…、そういった雰囲気はヒシヒシと伝わってきたわ

私はもう緊張して、視線もそらし気味でね…

今になって、急に弱気になっちゃって

”やっぱり、私なんかじゃ絶対無理だ。タッコ、マユミ…、ゴメン。たぶん不合格だわ、私…”

私は早くも心の中で、仲介の労を取ってくれた二人に謝ってた


...


野上さんは私をじーっと観察するかのようで、口を開くまでちょっと間があったわ

「…紹介者からは、あなたのこと、ケンカなんかできるタイプじゃないと聞いてるわ。こっちでも、”そういうこと”で南玉入りを望んでると捉えてるけど、いいのね?」

「はい。…でも初めに正直な気持ちを申し上げると、私には南玉連合は無理じゃないかって思ってはいます」

私は思い切って初っ端に、そうはっきりと宣言したの

「うん…。まあ、それはそれでいいいわ。…あと、これもだいたいは聞いてることだけど、本人の口から確認させてもらうわね。なぜ、ケンカもできないのに、南玉連合に興味を持ったの?」

「はい…、紅丸有紀さんの演説を聞いて…。ああ、例の東京埼玉混合女子駅伝の署名活動の際、私、陸上部だったんで部の先輩に言われてその場に行ったんですが、もう魅了されました。紅丸さんには…。それで、可能なら紅組にって気持ちもよぎりましたが、明らかに無理だろうって思っていたところ、友達が南玉連合はケンカができない子も、これからは採用するみたいだって聞いていたもんですから…」

私は一気にしゃべった

ありのままに…