記憶を、なぞる。【完】




そして言われた通りお店にやってきたら、初っ端から彼と再会してしまったというわけだ。


彼、光永詩乃は純くんとは同じ会社の同期みたいで、聞いた時は世間の狭さに驚いたし、なんとも言えない気持ちになった。



この飲み会にお邪魔して、もう1時間半が経つ。

時間が過ぎるのはあっという間で、まや子の言った通りみんな面白くてすごく楽しかった。


心残りがあるとすれば…、

まだ詩乃とお話できていないということだけだ。



まや子と純くんがわたしのほうを見ていないのを確認すると、ちょっとだけ…と自分に言い聞かせながら彼のほうに視線を向ける。


友達と数人で談笑している姿は、

と言っても、詩乃は相槌を打っているくらいなんだけど。あの人は自分からそんなにたくさん話すようなタイプではなかったはず。


やっぱり昔と同じようにかっこいい。
いや、昔以上にかっこいいのかもしれない。

彼を視界に入れただけで、自分の胸がきゅっとなるのがわかった。


昔と変わらない黒髪は、緩くパーマがかかっているマッシュヘアになっていて、細身でシャープな顔立ち。そこに並べてあるひとつひとつのパーツはどれも整っていて、文句のつけどころがないほどだ。