記憶を、なぞる。【完】




「あ、顔も真っ赤だ」

「だからみんなって言ってんだろ、」

「自分から顔は見せてきたんでしょ?」


そう言ってクスクスと笑っていれば、「はあ」とまたため息をついた詩乃が、するりとわたしの後頭部に手を回して、素早くわたしを引き寄せる。


「——っ」


そして、静かにくちびるを重ねると、あっという間に離れていった。


「お前も人のこと言えねえよな」

「…なに、」


声を出す暇もないほど、早いスピードで行われたそれに、フリーズして一瞬にして真っ赤になったわたし。


そんなわたしをせせら笑う詩乃はもう、赤くもなんともなくて、ただの性格の悪そうな顔をしていた。


【完】