そして「麻綺」とわたしの名前を呼ぶと、
「…わっ、」
「すげえ好き」
「…っ、」
またわたしの腕を引っ張って、力強く抱き寄せると、耳のそばでそう呟いた。
「…ほんとに?」
「嘘なんてつくかよ」
今日はたくさん腕を掴まれるなあ。なんて思いながらも、耳もとで聞こえる声が愛おしい。
懐かしいような、温かい詩乃の匂いに顔を埋めながらそっと彼の背中に手を回していると、視界がだんだん歪みはじめる。
負けじとこちらも強い力で抱き締めれば、「いてえよ」と笑い混じりの声が鼓膜を揺らすからあっけなく涙がぽろっとこぼれた。
こっちだって、いてえのよ。
心地よい声を耳に感じながら、ちょっと揶揄うみたいに彼を真似て「わたしも、すげえ好き」と囁く。
そうすれば、詩乃の身体がピクっとなった気がした。
「…真似すんなよ」
「たぶんね、わたし今のほうが前よりもずっと詩乃のことがすきだよ」
「…」
「恥ずかしいけど、この間久しぶりに会ったとき、あ、絶対また好きになるなって思ったの。わたし…って、詩乃の耳真っ赤だ」
「は…!?見んなよ」
話しながらチラッと見えた詩乃の耳朶がすごく赤くて、思わず声に出してしまった。
そうすれば、パッと勢いよく離されてしまう。


