記憶を、なぞる。【完】




「それは、この一週間思ってたことだから今日頑張って送ったの。…だって、ほんとに会いたかったから」


ぽっとなった顔で詩乃を見つめる。
見つめた先にある綺麗な瞳は、ゆらゆらと揺れているような気がした。


こんなの好きって言っているようなものだと思う。

とんでもなく、恥ずかしいことを言っている自覚はちゃんとあるけど、この空気をどうにかしたい気持ちでいっぱいだった。



「はあ〜〜」

「え、わっ、なに?なんなの…っ?」

「なんなのじゃねえよ、そんなのこっちのセリフだわ」



なんて言われるんだろう。と、次第に大きくなる自分の鼓動にそわそわしていたら、聞こえてきたのは、詩乃の大きなため息だった。

突然聞こえてきたそれに驚き声をあげると、しかめっ面を向けられる。その顔するのは絶対にこっちなんですけど。


「どういうこと?」

「ちょっと待って、車停めるから」

「わかった」


信号が青になって、再び発進した詩乃の車は近くの駐車場に止まった。そして、しばらくの沈黙のあと詩乃がゆっくりと口を開く。


「…あのさ」

「うん」

「今からすげえダサいこと言うけど」

「すげえダサいこと…?」

「…そこいちいち聞き返さなくていい」

「あ、ごめんなさい」


ギロリと睨まれてしまったので慌てて謝る。