記憶を、なぞる。【完】




「頑張ってね、麻綺ちゃん」


なにを…?頑張るの?

弥紘くんの言った言葉の意味がよくわからないけれど、一応「ありがとう!」とお礼を言っておいた。

目を細めてこちらに手を振っている姿は、やっぱり王子さまみたいだった。









「ね、ねえ。詩乃もしかして、怒ってるの?」

「別に怒ってない」

「…その感じ怒ってるじゃん絶対」

「だから、怒ってないって言ってんだろ」

「うそつき」

「…」


再び訪れる沈黙にため息をつきたくなった。


「乗って」と言われて5分程前に、初めて助手席にお邪魔した詩乃の車は、黒くて大きめのSUVで見た目も内装もすごく綺麗だから、乗るのにちょっとだけ緊張した。


車に乗ってからは、ずーっと沈黙続きで気まずいせいで、詩乃の運転している姿をまじまじと見つめることもできない。楽しみにしてたのに。


だから勇気を出して口を開いたんだけど、やっぱり気まずい空気のままだ。


せっかく、今日会えたのになあ。



「あのLINEどういうつもりで送ってきたわけ」

「…会いたい、ってやつ?」

「そう」


信号が赤になったタイミングで、喋ってくれた!と思ったら、聞かれた内容に少しドキリとした。自分で言うのってすごく恥ずかしいんだけど。