記憶を、なぞる。【完】




心底興味なさそうに返事をする姿は、なんとなく怒っているような気がする。わたしがメッセージ見てなかったから、怒らせちゃったのかな。

首を傾げながら荷物を取りに向かうとき、視線がぱちっと合った弥紘くんは、フッと綺麗な微笑みをわたしに向けた。

「…?」

弥紘くん、詩乃が怒ってる理由分かるのかな。



バッグを取りに戻って、まや子と純くんにお別れをして急いで駆けつけると、なにやら詩乃と弥紘くんはお喋りしているような雰囲気だった。


「お待たせしました…っ」


行っていいのかな。だめなのかな。と思いながらふたりにそっと近寄ると、詩乃と弥紘くんの視線が同時にわたしに注がれる。


「な、なに?」


端正なふたつの顔に見つめられて、あたふたしつつ、どきどきした。詩乃の視線は少し鋭くて、弥紘くんの視線はいつもと同じ。何考えているのか掴めない感じ。


「別に。…持ってきた?」

「うん、持ってきた」


バッグを見せながら返事をすれば、詩乃は弥紘くんに「じゃあな」と軽く手を振ってから、当然のようにまたわたしの腕を掴んだ。


「ちょ、詩乃…!?弥紘くんまたね…!」


凄い勢いでわたしを引っ張る詩乃に後ろから、声をかけても返事はない。

だから仕方なく、顔だけで弥紘のほうを振り返って慌ててバイバイをした。