記憶を、なぞる。【完】



「わたしちょっとお手洗いに行ってくるね」

「「行ってらっしゃーい」」


ポーチとスマホを持って立ち上がるわたしを、2人はにやにやとした顔で見てくるから、逃げるようにトイレに駆け込んだ。


もちろん、トイレにやってきたのはお化粧を直すためである。ふたりもそれをしっかり分かっているからあんな顔で見つめてきたんだろう。


「…よし、こんなもんかな」


短時間で直せる部分だけ直して、しっかり深呼吸をしてトイレを出る。


「わ…っ、すいません」

「こちらこそ、すいません」


と、詩乃とばったり会った時のように、お店の入口付近で男の人とぶつかりかけてしまった。慌てて顔を持ち上げて相手の顔を視界に映すと、この間と同じようにまた驚いた。


「麻綺ちゃん?」

「え、弥紘くん…?!」


わたしの目の前に立っていたのは、高校卒業ぶりに会う弥紘くんだった。この間は詩乃で今日は弥紘くんって…こんな偶然、あるのだろうか。


「久しぶりだね」

「…そうだね、ほんとに久しぶり」


久しぶりに会う弥紘くんも詩乃同様、前よりかっこよさがパワーアップしていて、思わず見とれてしまうほど。

そして、どうやら王子さまのような見た目も健在らしい。