記憶を、なぞる。【完】




そう言ってプツリと電話は切れたけれど、いつもと違う詩乃の甘さを含んだ声が耳にずっと残っていて、心臓はどくどくとうるさいまま。

停止していると、まや子の笑い声が目の前から聞こえてきてハッとする。


「あんた顔真っ赤。だけどよかったね」

「わたし行ってもよかった…!?」

「大丈夫大丈夫。もう純に連絡したから。すぐ迎えに来てくれるってさ」

「はっや、さすが純くん…」

「それよりあんたも早く連絡しないと」

「はっ…!そうだった!!」


まだどきどきとしている気持ちを抱えたまま、急いで詩乃に場所を連絡すると、すぐに既読がついて返信が返ってくる。

それだけで、幸せな気持ちになって胸がぎゅっと締め付けられた。なんか、夢みたいだ。ぽかぽかと温かいところにいるみたいな感覚。だけど、これはしっかりと現実なわけで。


「あと15分で着くみたい」

「よかったね〜頑張りなよ」

「うん、がんばる」



そわそわとしながらまや子と会話をしていると、時間がどんどん迫ってきて、


「やっほ〜麻綺ちゃん」

「純くん、この間はありがとう」

「いえいえ〜こちらこそ〜」


今日もわんこみたいに可愛い純くんが見えないしっぽをふりふりしながらやってきた。来るのはや、さすがだね。