「俺って分かりやすいらしいぜ?弥紘が言ってたけど」
「……ど、どういう意味」
「絶対分かってんだろその顔」
わたしの間抜け顔を見て、今度は詩乃が口元に弧を描いた。緩やかに口角をあげるその姿は、見とれてしまうほどかっこいい。
たぶんわたしの顔は今、今日1番の赤みを帯びているんだと思う。だっていま、全然寒くない。むしろ、暑いんだもん。
「だって、そんな、え?うそ」
「俺だってお前のこと好きだったよ」
「…っ」
突然の告白に、胸のあたりがぎゅうっと熱くなった。そんなことってあるんだ。ってひどく困惑してしまうし、どきどきしてしまう。
でもね、わたし。残念ながら、これは今のことじゃないんだよ。過去の話なんだから。どうか、落ち着いて欲しい。
ふう、と自分の心臓を落ち着かせるために深呼吸をした。それから、頭1個分ちょっと身長が高い詩乃を険しい顔で見上げると…——
「なにその顔」
向こうもわたしにこんな顔をされるなんて思っていなかったらしく、怪訝そうな表情を浮かべている。


