「この道どっち？」
「あ、これはこっち…ねえ、そういえばわたしも聞きたかったこと聞いていい？」
こちらを一瞥して「なに？」と言った詩乃の横顔を何も言わずにただじいっと見つめていると、
「…なんだよ」
わたしが少し言いづらそうにしているのを察してくれたのか詩乃が歩くのをまたストップして目を合わせてくれた。
「…詩乃はさ、あれから好きだった女の子とどうなったの？」
「…」
「付き合ったの…？」
心臓をビクビクさせながら、おそるおそる聞いた。これはずっと、弥紘くんにも聞けなかったこと。聞くのが怖くて聞きたいけれど、聞かなかったこと。
「付き合ってねえよ」
だから少し言い難そうに呟く詩乃に、すごくほっとした。あの頃の詩乃にはとっても申し訳ないけれど、付き合ってなくてよかったって今でもひどく安堵してる。
「なんで付き合わなかったの？詩乃、その子のことすごく好きそうだったのに」
すげえ可愛いとか言ってたくせにね。
そんなに好きなら、絶対付き合ってたかと思うじゃん。
「そんなの振られたんだから仕方ねえだろ」
「え、詩乃でも振られることってあるの！？」
目をギョッとさせて大きな声を上げてしまった。
だって、詩乃を振る女の子ってどんな子なんだろう。そんな子いるんだ。相当、理想が高いのかな。
