「つうか、頭の中混乱しすぎて何から聞いたらいいのか全然わかんねえんだけど」
笑っているわたしを睨みつけてくる詩乃の顔は、しかめっ面で余裕がなさそうで面白い。それに、
「あれ?なんかさ、詩乃顔赤くない?」
街灯に照らされている端正な顔は、ほんのりと赤い気がした。もしかしたら、気のせいかもって思ったけれど、
「うるせえ、お前のせいだわ」
「ええ〜可愛いね詩乃くん」
「お前調子にのんなよ」
どうやら気のせいじゃないみたい。
少し揶揄ってみたら否定することなく、わたしを置いて歩き出すんだから、かわいいね。
それに、語彙力崩壊してる。
普段のクールぶっている姿からは想像できないな。
走って追いかけて隣に並べば、チラッと視線を寄越した彼はムスッとした顔をしながらも歩くペースを緩めてくれる。やっぱりなんだかんだ優しいんだよ。
「詩乃ってさ、敏感かと思いきや意外と鈍感だよね」
「いや、分かるわけねえじゃん。お前もなんで言わねえんだよ…って言えるわけねえよな」
そうだよな。とボソッと呟く詩乃は余程、混乱しているらしい。さっきからよそよそしくて笑ってしまう。


