☽⋆゜


冬の寒さは、こちらのことなんてお構いなしに夜が深まれば深まるほど、どんどん厳しくなっていく。

それで、この幸せな時間もあと少しで終わってしまうんだ。こんなに、家に着きたくないと思ったのは、生まれて初めてなのかもしれない。



「聞きたかったことあるんだけど」

「なに?」


電車を降りて、マンションまでの道のりを並んで歩く。

なんとなく、わたしのぶんだけじゃない緊張感が走っている気がする沈黙のなか、冷たくなった両手を擦り合わせていると、横から小さな呟きが聞こえた。



「お前なんであのとき弥紘と付き合わなかったわけ?」

「…、」


落ち着いていた心臓が突然、ぎゅっと掴まれたような気がした。だれど、俯いて地面を蹴りながらなんてことないふりをする。


「一丁前に自分でどうにかできるとか言ってさ、突然俺のこと避け始めた癖に」

「…」


一丁前ってなんだその言い方。

って反論しようとしたけれど、まだ何か言いたそうな顔をしていたのでとりあえず黙っておこう。

たぶん、わたしが突然避けたこと根に持っているんだろうし。


「弥紘から、お前に告られてないし、そういう雰囲気になったことも1度もないって聞いてずっと不思議に思ってたんだよ」

「…」

「なあ、なんで?」

「…そんなになんでなんで攻撃してこないでよ」

「じゃあ、話せよ」