「…つうか、お前が連絡取れたんならいいわ。ほら、早く帰るぞ」
「…うん、かえる」
目を合わせるだけでなにも言わないわたしに耐えきれなくなったのか、また炭酸を一気飲みした詩乃はぞんざいに荷物を掴むと伝票を持ってさっさと行ってしまった。
その詩乃の背中をわたしはたぶん、覚束ない足取りで追いかけたんだと思う。
その日のわたしはそれから、どうやってお家に着いて、どうやって夜を過ごしたのか覚えてないほどずっと呆然としていた。
それから、わたしはショックのあまり徹底的に詩乃のことを避けてしまった。もう無理だと、失恋したんだと、何も詰まっていないわたしの脳みそが判断した。
電車も1本早い弥紘くんと同じ時間帯ので行ったから詩乃と朝会うこともなくなったし、連絡も、
《連絡先も聞けたし最近いい感じだから、もう大丈夫。詩乃の力借りなくてもひとりでうまくやれるから。今までありがとうね》
協力してくれたのに、突き放すような最低な言葉を送ってしまった。
それに対して返ってきた詩乃からの返信は、
《わかった。頑張れよ》
と短い言葉だけだった。
ぜんぶ何から何まで自業自得のはずなのに、呆気ない終わりに涙があふれて仕方がなかった。


