記憶を、なぞる。【完】




「もうさ、今ここでなんか送れよ」

「えっ、今!?」

「じゃないとお前絶対送んないだろうが」



だるそうに肘をついた詩乃に呆れた視線を向けられるけれど、確かにその通りだ。

ひとりでいる時なんて、余計送らないのかもしれない。…完全に見透かされている。



「ええ…でも、なんて送ったらいいの?」

「知らねえよ。そんくらい自分で考えれば?」

「あ、ちょっと」


縋るわたしに投げやりな態度を見せた詩乃は、コップにたくさん入った炭酸を勢いよく飲み干した。そして、「おかわり」と席を立ち上がってスタスタと離れていってしまった。


すご。あの人炭酸一気飲みしたんですけど…?

わたし絶対無理だ。喉死んじゃうよ。

ていうか、なんで今日あんなに機嫌悪いんだろう?意味わかんないし。



「はあ、もうどうしよう…」


弥紘くんとのまっさらなトーク画面をぼんやりと眺めながらため息をついた。


もともと詩乃と仲良くなるために、こうやって協力してもらっているわけだけれど、詩乃と接すれば接するほど、わたしは眼中にないんだってことをまざまざと思い知らされてしまうから、辛い。


協力なんて頼まないほうがよかったのかな。
でも、断っていたら今こうやって一緒にいることもなかっただろうしなあ〜。