記憶を、なぞる。【完】




じゃあもし、ここで協力してもらったら?


彼とは、もっと仲良くなれるかもしれない。
今よりも、もっと距離を縮められるのかもしれない。

そう考えたら、わたしの返事は即決だった。


「協力、してもらえますか?」


彼を見上げて言ったその言葉に、迷いなんてなかった。









「お前さあ、まじでなにしてんの?」

「だって」

「だってじゃねえの。ちんたらしてんじゃねえよ。せっかく連絡先聞けたんだからさっさと何か送れよ」

「そんなこと言われたって…」

「そんなこと言われたって、なに?」


わたしが好きなのはあんたなんだってば!!

つい、口から出そうになったその言葉はグッと飲み込んで「なんでもない」とだけ言えば、お得意のため息をつかれた。…くそう。


珍しく学校終わりに集合してから一緒に入ったファミレス。


そのファミレスで唇を突き出すわたしを、図体の何倍もデカい態度で睨みつけてくるこの男。

わたしが気になっていた彼と同一人物だなんて信じられます?こんなに口も態度も悪い人だなんて思わなかったよ。


本人にそう言えば、「勝手に理想を押し付けてくんな」ですって。ほんっとうに可愛くない!


でも、それでもわたしはこの男に惹かれてしまうんだからおかしいのかもしれない。