記憶を、なぞる。【完】




「気になるんでしょ光永(みつなが)くんのこと」

「へっ?」


お酒片手にぼーっとしていると、突然隣から声をかけられた。視線をそっちに向けると、まや子が呆れた顔をしている。


「麻綺さあ、顔真っ赤じゃん。そんなにお酒ばっかり飲んでないでさあ〜いい加減話しかけてきなよ?」

「そうだよ、麻綺ちゃん。目はじぃーっと詩乃(しの)のほうばっか向いてるのに、お酒しか飲んでないじゃん」


まや子の隣に座るまや子の幼なじみの純くんがひょこっと顔を覗かせた。そんな純くんの可愛いわんこみたいな顔は、まや子同様呆れている。


…ふたりとも、わたしのことすごい責めてくるじゃないの。ていうか、


「え、うそっ。わたしってそんなに見てるのっ?」

「見てる」「見てるよ」

「…うわあ〜まじか」


どうやらわたしは、無意識に彼へと視線を向けているらしい。

なにそれ、重症じゃん。意識しすぎじゃん。


途端に恥ずかしくなったわたしを、まや子と純くんが楽しそうにクスクス笑うから余計身体が熱くなってくる。うう、煽らないでほしい。


「あー、またお酒飲んだ!」


それで居心地が悪くなって、またお酒をグビグビ飲んじゃうんだからますますだめだ。


アルコールをたくさん含んだわたしの身体は、反応しやすくて気持ちに正直になる一方なのに。