「ほんとに?」
「…ほんとに、です」
「そう」
まだ少し疑いを含んだ瞳で見つめられるけれど、とりあえず引き下がってくれたので、ほっとする。
会話のあと、ガタンゴトンと走り出した電車。
「…」
「…」
…だめだ。電車の音と外の風景に無理やり意識を集中させようとするけれど、全然だめ。
気になっちゃう。
ああ、わたしこのまま降りる駅まで心臓持つのかな。だってすぐ目の前には彼がいるんだよ。
それに、さっきから柔軟剤?のいい匂いしてきてどきどきしちゃうんだけど。何使ってるんだろう。
ちょっとだけ彼の様子を見てみようと、おそるおそる目線を持ち上げて、
「わ」
「そういえばさあ、話戻してい?」
ばっちり目が合ってしまった。
しかも、どうやら向こうはわたしのことを見ていたらしい。
思わず声を零してしまったけれど、彼は特に気にする様子もなく、何かを思い出したかのように口を開いた。
「なんですか?」
「俺がさ、協力してあげようか。弥紘とうまくいくように」
「…協力?」
「そう。いる?いらない?」
どっち?っと唐突に聞かれて戸惑う。
そんなこと突然聞かれたってわたしが好きなのは、王子さまじゃなくてあなたなのに。
でも、協力してくれるって言うくらいだから彼がわたしに興味ないのは一目瞭然で、ここで断ってしまえばきっと、彼との関係はこの電車のなかだけで終わってしまう。


