「いや、えっと〜」
「どっち」
「まあ〜、すき?ですかね?」
何故か返答を急かされるから、小首を傾げながら曖昧な返事をした。
かっこいい人は基本的にみんな好きなので、好きか嫌いかと問われれば、わたしの答えは前者だ。
「やっぱりそうだよな」
「え?…って、うわあ…!」
やっぱりって、なに?
わたしの曖昧な返事に意味ありげにそう呟いた彼を不思議に思っていると、彼は「こっち」とわたしの腕を不意打ちで掴んで、やってきた電車のなかへグイグイ入っていく。
ええ…!?
わたしたち一緒に電車に乗っちゃうの?いいの?
器用に人の間を縫いながら進んでいく彼の背中と、徐に握られている腕を交互にみながら動揺する。
わたし今触られてるんだけど、やばくない?
と、触れている箇所を意識してしまえば、そこからぶわっと全身に熱が伝わってきて、
「ここ座って…ってなんであんたそんなに顔赤いの?」
「あ、いや、なんでもないんです。気にしないでもらって…!」
「暑いの?」
「あつくはないですね…。ほんとに大丈夫です」
手を離され、顔を覗き込まれた頃には、自分でもわかってしまうほど赤くなっていた。
恥ずかしいから、見ないで欲しい。
そう思っているわたしの気持ちなど知るはずもない彼は、容赦なく綺麗な顔を近づけてくる。


