「あのっ!」
次の日の朝。
駅でそわそわしながら待っていたら、わたしより数分遅れてやってきた彼を見つけた。
慌てて駆け寄ると、わたしに気がついた彼はゆるりと視線をこちらに移す。
そして、はめていたワイヤレスイヤホンを外しながら「あー、昨日の」と小さく頷くから、
わたしも、うんうんと首を縦に動かす。
「あの、昨日わたしのこと起こして下さいましたよね…?」
「…ああ。声かけても起きないからつい、おでこ叩いちゃったんだよね俺。ごめんな?」
「…えっ、いえいえ!とんでもないです…っ」
わたしのおでこに触れてくださったんですか…!?と、変態まるだしなことは口が裂けても言えないので慌てて首を横に振る。
まさか、おでこを叩かれていたなんて。というかその前に、わたし絶対間抜けな顔して寝てたよね?恥ずかしい。
「…」
「えっと…、どうかしましたか?」
おでこに触れられていた喜びと、間抜けな面を晒してしまった恥ずかしさに赤面していると、じいっという視線を突然感じた。
言わずもがな、視線は目の前の彼のもので。
きょとんとしながら首を傾げていると、形のいい唇がゆっくりと開いた。
「ずっと気になってたんだけどさあ」
「…?はい?」
「あんたさ、弥紘のこと好きなんでしょ」
「え?弥紘…?」


