あまりの痛みにパッと慌てて目を開く。
一番最初にぼんやりと瞳に映ったのは、通路を挟んだ向こう側で眠そうに腰を下ろしているどこかの知らないおじいちゃんだった。
えっ、わたし寝ちゃってたんだ…!?
徐々にクリアになっていく視界で急いで時計を確認すると、あと少しでいつもの駅に到着する時間だった。
うわ〜やばいやばい。寝過ごすところだった。あと、1分もないじゃんか。
ちょうどいいタイミングで流れるアナウンスにひやひやとして、ふう…と呼吸を落ち着かせていると、
「起きた?」
「…へ?」
突然、わたしの頭上あたりから知らない人の声が落ちてきた。
え?なんだろう…と引き寄せられるように、なんの気なしに顔を持ち上げて、
「…!?!?」
まず、びっくりした。
驚きすぎて、ただ目を見開くだけで声も出せなかった。
だってわたしの目の前に立って、わたしのことを無機質な瞳で見下ろしていたのは、密かに気になって見つめていた彼だったから。
え、なんでここにいるの…?
もしかしてわたしってまだ夢のなかにいる?起きてないの?
「…いたい」
試しに自分の鼻をぎゅっと強く摘んでみたけれど、普通に痛い。ヒリヒリする。これ、夢じゃない。現実だ。


