記憶を、なぞる。【完】




そう思いつつも、目があった日はすごく嬉しくてそのことを思い出しては学校でにやにやしてしまっていた。


そんなわたしは、朝にめっぽう弱くていつも電車のなかでは睡魔と闘っている。
電車の揺れってちょうどよくて心地いいから、うとうとしちゃうんだよね。


だけどそれがテスト期間になると、うとうとどころの可愛い話ではなくなってしまうのだ。


「やばい、眠い…。だめ、寝たらだめ。寝過ごしちゃう…」


必死に自分を起こしているのに、前日に夜更かしを…というか、オールをしてしまったせいで、眠気は容赦なくわたしを誘惑してきた。

そして、だんだん目を開かせてくれなくなって、そのままストンと夢のなかへ。


たぶん、今思えばあのときのわたしは必死すぎるあまり白目を剥いていたんじゃないかと思う。





「…たら」


あれ、なんかおでこがチクチクする気がする。
それに、知らない人の声が近くで聞こえるような気もする。

ぼんやりとそう思っていたら、



「いっ…!」

「気持ちよそうに寝てるとこ悪いけど、あんたこのままだと遅刻するよ。いーの?」



今度は突然おでこに激痛が走って、目の前からは聞き慣れないひとの声が鮮明に聞こえた。