記憶を、なぞる。【完】




自分の恋愛事情はそっちのけの癖に、人の心配をしてしまう。ていうかそれよりも、


「…なんかふたりとも短時間ですごい酔っ払ってない?」

「そんなことないよお〜」

「ないよ〜お」

「…」


さっきまでケロッとしていたのに、わたしと詩乃が話している間に相当飲んだのかまや子と純くんはふわふわとしている。それに、2人揃ってフラフラしてる。だめじゃん。


こりゃあ、重症だなあ。
頭のネジ何本かそこらへんに落として来ちゃってるよふたりとも。


「いやいや、そんなことあるでしょうが」

「ないないっ!それよりさあ〜、ちゃんと話せたあ?」

「話せたあ〜?」

「うん、話せたよ。ふたりのおかげで。ありがとうね」


ふらふらとふたり同時に倒れそうになる様子にヒヤヒヤとしながらもお礼を言えば、ふたりの表情はパアッと更に明るくなる。


「ふふっ、いいのいいの〜!いつも麻綺にはお世話になってるからこのくらい〜」

「そんなの、わたしのセリフだよ」

「ええ、ほんと?麻綺だいすき〜」

「わあっ…!ちょっと!」

「ふふ」



まや子は純くんからパッと離れると、今度は勢いよくわたしに抱きついてきた。

酔っ払って顔を綻ばせているまや子は、いつものサバサバ感を取り払っていて、女のわたしから見ても可愛くてドキドキしてしまう。