記憶を、なぞる。【完】




「でも、ほんとにびっくりしたね」

「なにが?」


脈絡なくそう言えば、ハイボールをひと口含んだ詩乃に、は?という顔を向けられる。

久しぶりの容赦ない態度にクスッと笑う。


「だってお店について、入ろうかな。どうしようかな。って迷ってたら詩乃が来るんだもん。びっくりしすぎて一瞬誰だかわかんなかったよ」

「ああ、そういうこと」

「詩乃は純くんとは同期なんだよね?」

「だな。で、お前は純の大好きな幼なじみと友達なんだろ?」

「えっ。純くんがまや子のこと好きってこと、知ってるの?」


驚いた顔を向けると平然とした顔で、「だって、あいついつもあの子の話してるしな」と詩乃が呟く。


「なんて言ってるの?」

「昨日まや子とさ〜〇〇して楽しかった。とか今日はまや子と〇〇に行くんだ、楽しみ。っていつもにやにやしながら自慢してる」

「そっか〜でも確かに純くん普通に言いそう」


「さすがに聞き飽きたけどな」とげんなりした顔をする詩乃に苦笑いを零す。


純くんがにこにこしながらみんなにまや子の話をしている姿が容易く想像できてしまった。

純くんまや子のこと大好きで、いつもまや子の後ろ追いかけてるからなあ〜。


よっぽど嬉しそうに話してるんだろうな。