「…な、なに」
どきっとした。
なんとなく、このタイミングで見られるとは思っていなかったから、動揺して上擦った声がもれる。
気づかないうちに、無意識に詩乃のほうへ上体を寄せていたらしく、思いのほか近い距離でぶつかる視線にあたふたした。
でもたぶん、それは詩乃も同じなんだと思う。
ちょっと目が驚いているみたいだから。
「…ほかになんかいる?」
「…いらない、だいじょうぶ」
「わかった」
数秒目を合わせてから遅れて返ってきた問いかけに、視線を逸らしながら首を横に振ると詩乃はタッチパネルをもとの場所に戻していた。
「…」
「…」
なぜか突然、なんとも言えない空気になって、気まずさから慌てて残りのメロンフィズを飲むけれど、味は全く分からなくて余計そわそわしてしまう。どうしたらいいんだろう…。
「お待たせいたしました〜烏龍茶とハイボールですね〜」
「あっ、ありがとうございますー!」
そんなわたしたちを助けてくれるかのように、元気のよい店員さんがやってきて、激早の烏龍茶とたっぷり入ったハイボールを渡してくれたので慌てて受け取る。
「はい、ハイボール」
「どーも」
それを零さないようにと詩乃に渡せば、ちょっと空気が和んだような気がしてほっとする。スピーディーかつ、元気のよい店員さんに感謝だ。


