「そんなことより、お前結構飲んだ?首まで赤いけど」
「…うん。飲んだかもしれない」
胸の当たりがじんわりと熱くなっているわたしのことなんて露知らずの詩乃がまた、顔を覗き込んでくる。詩乃の顔は、赤くもなんともなっていないからたぶん、お酒に強いんだろう。
…というか、そんな近くでじっと見られるの恥ずかしいから、やめてほしいんだけどなあ。
化粧崩れてきているだろうし。
わたしより高い位置にある端正な顔を見上げていると、彼の口角がゆるりと不敵にあがった。その表情にどきっとしつつも、
ああ、どうせ今から揶揄うようなこと言ってくるんだろうな。と、これからの展開を予想する。
だけど、嫌じゃないの。あのときの空気に戻れたような気がして内心すごく嬉しいんだ。ちょっと泣きそうになっちゃうけど。
「同じのばっかり飲んでんだ」
「違うし、ピーチとかオレンジとかパインも飲んだし」
「は、見事に甘いのばっかだな」
「うるさいよ。苦いのは飲めないの」
思った通りで、またバカにしたようにクスッと笑いかけてくるから、口を尖らせて言い返す。
お酒はあまり強い方ではないから、飲むのは甘くて飲みやすいものばかりだ。ビールとかハイボールとかは苦手だから飲めない。お子ちゃまなんですよねわたしの舌は。あなたと違って。


