「え、なに?なんで笑ってるの…?」
思わず、眉を顰めて怪訝な顔を向けてしまう。
だって、そうだよ。飲んでるお酒の名前答えただけだよ?
おかしなことは1つも言ってないはずなのに答えた瞬間、なぜか詩乃が肩を震わせて笑い出すんだからびっくりしてしまう。
この男、なんで笑ってるの?
もしかしてわたし、笑っちゃうくらいおかしな顔しちゃってたとか?それなら、かなり恥ずかしいんだけど。
と心配したけれど、どうやら詩乃が笑った理由は違うみたいだ。
「いや、だって、お前ほんと昔からメロン系の飲み物好きだなって思ってさ」
「…どういうこと?」
「高校のときもクリームソーダ頼んで美味しそうに飲んでなかったっけ。ファミレスで」
「…ああ、あのとき?」
「そう、あのとき。すげえ喜んでて子どもみたいだった」
「…おい」
「いてえな」
照れ隠しにきっと睨みながら思わず、詩乃をパンチしてしまう。痛そうに顔を歪めてるけど、大袈裟だよ。それに、このくらいは許して欲しい。
頷きながらなんてことない様子で返事をしたけれど、まさか覚えていたなんて、と動揺している。
あの日はわたしにとっては”特別”だったから、わたしはぜんぶ鮮明に覚えてるけど、詩乃も覚えているとは思わなかった。


