私は、高野 陽(たかの はるひ)、今の会社に就いて半年で社会人2年目になる高卒の20歳だ。


応募の時に、募集事項を見誤ってしまいなぜか映画館の時間帯責任者(MG)という立場にならなければいけなくなってしまった。


映画館には、チケット売り場・ポップコーン売り場・劇場を清掃したりグッズを販売するフロアの3セクションがある。


3つのセクションを2ヶ月で完璧にこなして、現場研修自体は終わっていたけれどMGのシフトに上がるには、現場スタッフが人員不足なため現場のシフトに入りつつ時間帯責任者の研修を両立している。


初めてあなたに出会ったのは、4月。


入社してきたあなたは、金属フレームの丸渕めがねをかけて黒髪マッシュ姿。

眼鏡好きな私には、眼鏡を見られるだけで至福。


あなたの名前は、吉田 颯太(よしだ ふうた)「はやた」と呼びそうだけれど「ふうた」と読むらしい。


昔からいるスタッフが小さい頃から知っている子らしく、「ふうた」と読むことを教えてもらった。


私は眼鏡フェチということもあり、最初は眼鏡を見ていた。


他のアルバイトの子も入社してきたため、まとめて私が研修をすることになった。


何回か研修を進めているうちに性格がわかってきた。


吉田さんは仕事を覚えるのは早いけれど、丁寧すぎて仕事のスピードは人よりゆっくりしている。


3つのセクションシフトを回っていた私は、フロアに入っている吉田さんとシフトがかぶることも少なく、仲良くなるにも人見知りを発動されてしまっている。


仕事の話しか会話が無くて、端的な返答しか返ってこない。


年齢を聞くのも、他のスタッフから聞いて初めて知った。


吉田さんの年齢は、22歳。大学生のアルバイトが多いため、学生なんだと思っていたら実はフリーターで浪人生。


人見知りなのに優しくて自分より人を優先する所に惹かれていった。

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働いていると、風の噂で3歳から一緒にいる幼なじみのが高校卒業後に働いているけれどうまくいってないという話を聞いた。


転々と職場を変えるくらいなら、人手不足なうちで働くことは出来ないかなと思い


支配人や、他のMGに相談して他会社から引き抜いてきた。


繁忙期で、親友や気になる眼鏡のスタッフも増えて充実しているなと思いながら日々を過ごしている時。


喉に異変を感じた。


普通の風邪とは違う喉の痛み、話すときも、呼吸をするときも刺すような痛みと咳が出てきた。


これは、世間で有名なウイルスにかかってしまっているのかもしれない。


この日は他のスタッフに移らないように、近づくことと話すことを裂けて退勤まで凌いだ。


家に帰ってすぐ玄関で両親に喉が痛いから、晩ご飯から部屋に運んで欲しいと伝えた。


その後、SNSを使用して両親と弟にお風呂は最後にして欲しいこと、消毒スプレーを持ってきて欲しいこと、私の部屋に来るときはマスクを必ずして欲しいこと、明日の朝に保健所に連絡をして検査を受けさせて欲しいことを伝えた。


この時点で夜の10時。


熱はかなり上がっていて、意識がふわふわして食欲が無かった。


もう寝ようと思ったけれど、24時まで営業している職場に連絡をしてから寝ることにした。


翌朝、目が覚めると両親が何か言っている。


発熱していて39度を超える高熱のため、病院で診察が出来るらしい。


病院の受け入れは、残り時間30分ほどしか無いため支度をしてということだった。


もう何でもいいから、寒くない格好にしようと思って全身モコモコの部屋着にした。


この状態での運転は危険度が高すぎるため、父の車で病院に行くことになった。


車の窓は全開で、手袋、マスクは2重。


厳重な装備で病院へと向かった。


病院につくと診察室には入らずに車の窓を開けて検査をして結果が出るのを待っていた。


その間も私の熱は上がり続けているのか、寒気がどんどん増してきている。


これはしんでしまうかも入れないと思うくらいに。


「ねぇ寒い。痛い。どうにかして!

 帰り冷えピタ買って。もう1時間経つのにまだ結果出ないの?!」


熱が高すぎて曖昧だが、どうにも出来ない事を父に八つ当たりしてしまっていた。