☆それから
ぼくは一年も日記を書かなかった
おもしろくないことばかりで
何となく書く気がしなかったからだ


6月16日

一年ぶりの日記だ

今日最悪な事件がおきた

ぼくのうわばきが
なくなった

下駄箱のまわりを
いっしょうけんめいさがしたけど
どこにも見当たらなかった

進太もいっしょにさがしてくれた
けど、見つからなかった

ずっとくつ下のままで
かっこ悪かった

朝、廊下で先生が来るのを待った

「おい!授業がはじまるぞ」

うしろから
B組の先生に頭をたたかれた

やっと担任が来た

「先生!ぼくのうわばきが・・・」
言いかけたところで

「お~い!今日はひなん訓練だぞ」
先生はみんなに呼びかけた

すぐに非常ベルがなった
「わあ~ッこまった」

ぼくはパニックになった

だって運動場まで

走らないといけない

ひどい目にあった

足のうらがめちゃめちゃ痛かった

帰りの会の時
くつ下が真っ黒だった

「ひどいなあ」

ぼくが顔をしかめると
うしろでヤスがクスクス笑った

「あいつか、ヤスのしわざだったんだ」
そういえば、今日何度も
目が合った

先生の話が終わると
ヤスは走ってにげた

帰りに用務員の先生が
ゴミを集めていた

近くに行くと
ぼくのうわばきが
片方だけあった

真っ黒で、きたなかった

くそーッ
ヤスのやつ許さない
ぼくは悔しくてたまらなかった

夜、玄関の前で
母さんの帰りを待った

やっと帰ってきた母さんに

「うわばき買って!」
ぼくは手を合わせてたのんだ

母さんはいやな顔をした

「まだ新しかったのに、なくしたの?」

「母さん、一円でも節約したいのに」

覚悟していたけどやっぱり怒られた

千円もらうと
まっしぐらにくつ屋にいった

店が開いていてほっとした

「どうか、もうやられませんように」

ぼくはちょっと不安だった

今度なくしたら
おこづかいで買うしかないな