「美桜様のお支度を整えるのも、これが最後ですわね」
「え、やだメアリー。そんなにしんみりしないで。涙が出て来ちゃう」
「そうですわね。失礼しました。いつものように笑顔で、心を込めてお手伝い致しますわ」
 
そう言って鏡越しに微笑んでから、メアリーは慣れた手つきで美桜のヘアメイクに取りかかった。

今日はどんなスタイルにするか、メアリーは美桜に尋ねることもなく進めていく。

(きっと今日はおまかせコースなのね。楽しみ)
 
やがて鏡の中の美桜は、髪をアップに、前髪も横に流して整えたフォーマルなスタイルに仕上げてもらった。

(なんだか、かしこまった雰囲気ね。でも最後に皆さんにきちんとお礼を言いたいから、合ってるかも)

鏡を覗き込みながら美桜がそう考えていると、後ろでメアリーがドレスを広げてくれた。

「こちらをどうぞ」
「わあ、綺麗な色ね」 
 
薄い紫で裾が波打つように広がるドレスは、ウエストから左右に広がる様に、薄いピンクがかったシルクオーガンジーが重ねてある。

同じような胸元のデザインも、幾重にか重なった花びらのようだ。

「とても良くお似合いですわ」
 
そう言って微笑むメアリーに、美桜はありがとうとお礼を言うと、たまらずメアリーに抱き付いた。

「まあ、美桜様。しんみりしてしまいますわ」
「そうね。ごめん」

お互い涙目になりながら笑う。

「ありがとう、メアリー。行ってきます!」