雨は徐々に強くなっていく。

私たちに降り注ぐ空の涙は次第に川にたまっていき、今にもあふれだしそうになっていた。

遠くで轟音がする。

何事かとオリヴァーの父が外を見に行った。

「またか…」

彼はささやくように言う。

私も扉から外をのぞいた。

そこには黒い水が様々なものを飲み込んでいく景色が広がっている。

あの時と同じだ。

「逃げないと!」

私は叫んだ。

町の人々はオリーブの丘へと走っている。

私たちも行かなければ。

外に出ようとした。

しかし、オリヴァーの父は動かない。

彼の心が凍っていく。

私は彼の頬をはたいた。

「逃げないと!オリヴァーともう会わないの⁉」

私は外の轟音に負けない大きな声で叫んだ。

目に光が戻り、心に炎が宿っていく。

それでも彼は動かない。

私は彼を押して外へと出した。

彼はまるで人形みたいに軽く動いた。

ふと室内を見渡すとひときわ目立つヴァイオリンを見つけた。

遠くからでも読める文字で女の人の名前が綴られている。

オリヴァーのお母さんのものだ、私は直感した。

そのヴァイオリンを持って外へと出る。

そして丘へと向かう。

オリヴァーの父も私についてきた。

突風が私たちを襲う。

その拍子に大事なケープがひらりと私から離れていき、視界から消えてなくなった。

空は泣き叫ぶどころか、絶叫しているようにも見える。

オリヴァー、どこにいるの?

あの場所にいることを信じて私は進んだ。