僕は久しぶりに城下町へ出てきた。

ここにはよく家族で来ていた。

でもママがいなくなってからは一度もここへ来たことはなかった。

あの洪水でこの城下町は水の中へと沈んだ。

僕らの町よりも標高が低いのだ。

それでもよくここまで復興したものだ。

見るものすべてが新しい。

いや、今そんなことはどうでもいい。

早くオリビアを探そう。

空がまた暗くなった。

昼間なのに街灯がついていた。

空を分厚くて暗い雲が覆っている。

今にも空が泣きそうだ。

早くしなければ。

僕は町中の人にオリビアのことを聞きまわった。

しかし、収穫は一つもなかった。

オリビアを見つけるどころか情報すらないなんて。

僕は落ち込んで町のはずれにある公園に座り込んだ。

背負っていたヴァイオリンを取り出して、音色を空に向けて放つ。

ああ、この音を聞いてオリビアが来てくれたらいいのに。

夢中になって弾いていると一人の男が近づいてきた。

上品そうな服を着ている。

そして僕に話しかけてきた。

「君はもしかしてオリヴァーかい?」

その男はなぜか僕の名前を知っていた。