私が町を出て城下町に来てから1か月が過ぎた。

懐かしい面影は何もなく、ただ私の知らない光景が佇んでいた。

先生のもとで毎日歌の練習をしている。

大自然の中で歌っていた時とは違って大きなホールの中で、目の前にはマイクがあって、きれいな音楽が流れてくる。

そして前のように一日一曲ではない。

色々な曲を歌う。

歌詞の意味を考え、心を込めながら。

私の先生はとてもやさしかった。

私の過去を知っていてそのケアもしてくれた。

それでも、オリヴァーと別れた悲しみを埋めることはできなかった。

私の心の時計は完全に止まっていた。

「オリビア、今日もお疲れ様。そういえば君に手紙が来てるよ」

「先生、お疲れ様です。手紙…ですか?」

私は先生から手紙を受け取った。

白い包み紙にはオリーブとヴァイオリンのイラストが描いてあった。

オリヴァーからだ!

とっさにそう思った。

同時に大きな不安が押し寄せてくる。

どうして手紙を出してきたのだろう?

最悪の別れ方をしてしまった私たちはもう連絡を取り合うことも会うこともないだろうと思っていた。

震える手で手紙を開く。

そこにはオリヴァーの正直な気持ちが綴られていた。