お店のおばちゃんは亘くんを見て「こんなイケメンいるんだぁー」なんて感心して望夢のパパだとわかると「3人で仲良くしなさいよ」と言ってもらえた。

望夢は亘くんがいてくれて嬉しいのかずっと側にいた。こんなべったりならシンガポールに戻る時どうするんだろう?望夢はパスポートもないから一緒に行けないよな。と思ってたら

「先輩これからどうするんですか?シンガポール帰るんですか?それとも東京ですか?」と高林先生が質問してきた。

「まだ悩んでる。詩織と相談だな。詩織と望夢の希望を優先にしたいからな」
もーどうしてそんな優しいことを言ってくれるんだろう…望夢はご飯も食べてはしゃぎ疲れたのか亘くんの膝で寝てしまった。

高林先生も亘くんとの再会に喜んでくれたのはいいけど、案の定かなり飲んでしまって結局、沙代子さん家に泊まることになった。

亘くんも沙代子さん家に一緒に泊まってってくれるので明日の朝も安心だ。起きた望夢に泣かれなくても大丈夫だろう。望夢を布団に寝かせてくれた亘くんから声をかけられた。

「詩織、書類用意できるか?」
「書類ってどんな?」
「戸籍とか」
「札幌に本籍地移してるから役所で取れるよ」
「明日でも準備しよう。俺のはもう届いたから」
「何に使うの?」
「これ…」
そう言って亘くんが出してきたのは婚姻届だった。

「もう俺のは記入したから詩織、記入してくれる?」

初めて見る婚姻届には夫になる人の欄に亘くんの名前が書いてあった。妻になる人の欄は空欄だ。

「沙代子さんと絢さんに証人してもらいたいと思うけど詩織はどう思う?他に誰か頼みたい人いる?」
嬉しくて目に涙が浮かんだ。私の大切に思ってる人達を亘くんも大切にしてくれてる。
「私も2人に頼みたい」
涙声でそう呟くと
「じゃあ明日、頼もう。2人で」
「うん」
亘くんに抱きしめられながらふと横を見ると望夢が笑いながら寝ていた。

望夢の幸せそうな寝顔を見ながら私は妻になる人の欄に自分の名前を書いた。

幸せってこういうことなんだろうな。幸せな気分のまま亘くんの隣で眠ることができた。