「亘くんありがとう。久しぶりにゆっくりできた」

「それはよかった。少し顔色も良くなったな。じゃあご飯食べて。食べれるだけでいいから」

「わぁーどーしたのこれ?」
テーブルの上にはお寿司とお吸い物と茶碗蒸しまであった。

「詩織、お寿司好きだっただろ?だから頼んだ。本当は病院だからダメなんだろうけど卓也に頼んだ」

「卓也…さんに?」

「あぁ…西の名前だ。あいつはそれなりにここでは偉いみたいだからな。ほら望夢が起きる前に食べよう。俺も寿司なんて久しぶりだから」そう言って2人で食べながら話をした。

どうして亘くんの側からいなくなったのか、美華さんのこと…そして札幌に行ってからのこと、仕事のこと、沙代子さんとあやちゃんの家でお世話になることになって今現在もお世話になっていること…
「沙代子さんとあやちゃんがいなかったら1人でなんて産めなかったかもしれないし育てていくなんて…産んでからも育休も取らせてくれたし、今は内科の外来勤務で夜勤もないのよ。今回の入院もそう。2人が手助けしてくれたの。そうじゃなきゃ小児科で働いて知識があっても何もできなかった…亘くんにも会えなかった…」

「詩織、俺も沙代子さんと絢さんに会いたい。お礼言わないとな今までお世話になったって」

「亘くん、ありがとう。探してくれて、また会えるなんて思ってなかった。あ!そういえばあやちゃんのいとこなんだけど高林先生って亘くん知ってる?」

「大学の時に後輩で高林っていたが、その高林か?」

「多分そうだと思う。飲みに連れてってもらったことがあるって言ってたよ」

「いとこ…なのか?」

「そう。今、実家を継ぐために私と同じ病院で脳外科の先生してる。東京を出るとき亘くんに連絡しようとしたら、もう連絡取れなかったって言ってたよ。また会いたいって。亘くんが脳外科医だったから、自分も脳外科医になったって、めちゃくちゃ尊敬してたよ」

「そうか…あの時は誰とも連絡取りたくなくて…何も言わずにスマホ変えたからな。高林に連絡取れる?」

「うん。あやちゃんに聞けばすぐに教えてくれると思うよ」

「そうか…俺も会いたいな。せっかくだから」

「ふぇーん。えーん」

「望夢、起きちゃった?よく寝てたね。いい子いい子」泣いてる望夢を抱っこして背中をトントンと撫でてあげる。

「望夢はお利口さんだったな。ご飯食べれるようになったら点滴外れるから、もうちょっと頑張ろ。望夢、パパの所来るか?おいで」
亘くんが手を伸ばすと
「ぁーいっ」望夢も手を伸ばした。
「望夢はパパが好きか。お利口さんだ」
ほら、たかいたかーい
「キャッ、キャッ」

最近、ますます大きくなって抱っこも大変な望夢を軽々とたかいたかいしてくれる亘くんを見て嬉しくて涙が一粒溢れた。